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なぜアメリカはエルサレムを首都と承認したのか:イスラエルメディアを読む

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イスラエルの正式戦車、メルカバ(Merkava)です。イスラエルの国柄を現してか、乗員の安全を非常に配慮したつくりとなっており、車体後方に脱出用ハッチがあったり、トロフィー防衛システム(ロケット弾などの飛翔体を自動で捕捉し、迎撃するシステム。Call of Duty: Modern Warfare 2のミッション8に登場します)を試験的に搭載しています。

 

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アメリカのトランプ大統領が、イスラエルの首都をエルサレムであると認める旨を発表しました。

www.bbc.com

thehill.com

エルサレムイスラエルの首都となったいきさつを見てみましょう。

1947年の国連パレスチナ分割決議により国連管理下の国際都市とするよう定められた。しかしイスラエル建国とともに起ったパレスチナ戦争 (第1次中東戦争 ) の結果,市の西半分はイスラエルに,また旧市を含む東半分はヨルダン領に組入れられた。イスラエルは 50年,エルサレムを首都と定め,さらに 67年の六日戦争 (第3次中東戦争) で東エルサレムを含むパレスチナ全土を占領したのち,統合エルサレム全体を首都と定めた。

kotobank.jp

イスラエルによるエルサレム占領は一方的な行為でり、同国による首都宣言を世界各国は認めていません。イスラエル議会やイスラエル首相公邸はエルサレムにありますが、わが国を含む世界各国の大使館はテルアビブに存在します。大使館は各国の首都に置く決まりであるため、実質世界各国はイスラエルの主張を認めていませんでした。

しかし、ここに来て、アメリカが突如、エルサレムイスラエルの首都と認定するという行為に出たわけです。

 

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もともと、トランプ大統領は親イスラエル派の人物でした。

まずトランプ大統領は大統領選挙期間中、米国大使館のエルサレムへの移転を公約に掲げていました。今年5月の中東訪問の際には、現職の米大統領としてはじめてユダヤ教の聖地「嘆きの壁」を訪問。娘婿で、大統領上級顧問のジャレッド・クシュナー氏もユダヤ教徒です。

しかし、なぜこの時期なのでしょうか。

筆者が考える理由のひとつとしては、ダーイシュ(IS、いわゆる「イスラム国」)との戦いに一定の区切りがつき、中東情勢が若干安定化したからではないでしょうか。

yyz095.hatenablog.com

ダーイシュは最大の拠点であるモスルとラッカを失い、潰走状態にあります。従って、米国は対ダーイシュ戦闘に派遣していた米軍の段階的撤退を進めています。

中東、特にアラブ勢力へのコミットメントが軽くなり、その分の政治的リソースをイスラエル情勢に振り分けられるようになった、と考えられます。

 

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本件に対するイスラエルの反応を見てみましょう。

イスラエルのインターネットメディア、『タイムズ・オブ・イスラエル』から。

www.timesofisrael.com

In his first public comments alluding to the US’s expected announcement Wednesday recognizing Jerusalem as Israel’s capital, Prime Minister Benjamin Netanyahu praised “important expressions” of Israel’s national identity, “especially today.”

エルサレムイスラエルの首都と承認する米国が水曜日に発表する予定の方針について、ベンヤミン・ネタニャフ首相は、「特に今日は」イスラエルのナショナルアイデンティティーにとって「重要な表現」であると賞賛した。

当たり前といえば当たり前ですが、ネタニャフ首相は米国の承認について歓迎の意を示しています。このコメントはネタニャフ首相のフェイスブックページに投稿された動画内のもののようです。詳細については追ってコメントを表明する、とネタニャフ首相は述べるに留めています。

Earlier, during a 22-minute speech to foreign diplomats, he did not address Trump’s expected announcement. Instead, Netanyahu chose to tell the Jerusalem Post conference about Israel’s burgeoning diplomatic relations, hailing what he described as an unprecedented increase in the Jewish state’s global popularity. He even addressed American public opinion on Israel, which he said has steadily improved over the last decades.

外国の外交官に対する22分間のスピーチの中で、ネタニャフ首相はトランプ大統領が予定している発表については触れなかった。その代わりに、ネタニャフは『エルサレム・ポスト』のカンファレンスにおいて、イスラエルの急成長中の外交関係について語り、世界におけるユダヤ人国家の人気が過去にないほど上昇していると賞賛した。彼はまた、アメリカ国内のイスラエルに対する世論についても言及し、過去数十年で大きく進展しているとも述べた。

やはり、今の段階ではネタニャフ首相は踏み込んだ意見表明は行っていません。

He did not say a word about Trump’s anticipated announcement. Netanyahu has ordered cabinet ministers not to comment on the issue, apparently at the request of the Trump administration.

ネタニャフ首相はトランプ大統領の発表については一言も触れていない。トランプ政権の要請によるものか、この件については発言を行わないよう、ネタニャフ首相は閣僚に命じている。

イスラエル政府としての公式な声明を現在準備しているところなのでしょう。トランプ大統領は5日にはネタニャフ首相と電話会談を行っていることから、おそらくその時点でエルサレムの首都承認が伝えられた様です。

エルサレム・ポスト』のカンファレンスではこれ以上のネタニャフ首相からの言及は無かったものの、イスラエル教育相のナフタリ・ベネットは同じくトランプ大統領の方針を歓迎し、米国が見返りに何かをイスラエルに求めることは無いだろう、とコメントしています。

Speaking after Netanyahu, Education Minister Naftali Bennett welcomed Trump’s expected recognition of Jerusalem as Israel’s capital, rejecting the notion that the US president will ask Israel for anything in return.

ネタニャフ首相の講演の後、教育大臣のナフタリ・ベネットはトランプ大統領エルサレムの首都承認を歓迎するとし、米大統領イスラエルに見返りを求めることは無いだろうとした。

また、ベネット教育相は他国もアメリカに続きエルサレムイスラエルの絶対的な首都であると承認すべきである、とも述べています。

これらに加えて、イスラエルの政党、イェシュ・アティッドの党首、ヤイラ・ラピドも同カンファレンスで講演をしており、彼は世界各国がエルサレムの首都承認だけでなく、ゴラン高原におけるイスラエルの主権も認めるべきである、と述べました。

“The new reality in Syria is that Iran is going from boots on the ground to roots in the ground. This is why there is no scenario in which Israel can, or should ever, be expected to return the Golan Heights,” he said. “Had we returned them to Syria, as the world demanded, we would have had Iranian soldiers staring down at the Galilee, and Iranian artillery aimed directly at our cities. This is the time for the world to recognize full Israeli sovereignty over the Golan Heights.”

ラピドは「シリアでの現実は、イランが"ブーツ・オン・ザ・グラウンド”(筆者註:軍事的プレゼンスのことか?)から"ルーツ・オン・ザ・グラウンド"(筆者註:イランが軍事面以外で存在感を増している、ということか?)なのである。これゆえにイスラエルゴラン高原を返還すべきシナリオなど存在しないし、存在するべきでもないのだ。」と述べた。「もし世界の要求に従いゴラン高原をシリアに返還していれば、ガラリヤをイラン軍兵士が見下ろし、イラン軍の火砲が我々の街に向いているだろう。ゴラン高原におけるイスラエルの完全な主権を世界が認める時が来たのだ」

ラピド氏が党首を務めるイェシュ・アティッド党の政治姿勢は中道であるものの、イスラエル国益についてはしっかり主張する、という姿勢をとっています。

ゴラン高原はシリア南西端の丘陵地帯で、1967年の6日間戦争以来イスラエルの実効支配下にあり、シリアとイスラエルの間で返還交渉が続いています。

しかし、上記の発言を見る限り、イスラエルとしてはエルサレムは当然のこと、ゴラン高原など、他国からも領有権を主張されている地域についても、国際社会はイスラエルを支持する姿勢を打ち出すよべきであるという世論があるようです。

さすがにアメリカがゴラン高原の領有権についてまでイスラエルに一方的な肩入れをするとは思えませんが、親イスラエル色の強いトランプ大統領のことです。

日本を始め欧米諸国に対し大使館のエルサレム移転を求めてくる可能性は否定できませんし、イスラエルによる入植活動への支持を求めてくる可能性もあり得るかもしれません。