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なぜアメリカはエルサレムを首都と承認したのか2:アメリカメディアを読む

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アメリカはエルサレムイスラエルの首都であると承認し、在イスラエル米国大使館をテルアビブからエルサレムに移転すると発表しました。

www.asahi.com

www.bbc.com

www.wsj.com

日本の報道機関のベタ記事だけでは読めない側面や、表に出てこない意見もあります。

ウォール・ストリート・ジャーナル』と『ザ・ヒル』のオピニオン欄の論稿を見てみましょう。

ウォール・ストリート・ジャーナル

「大使館移転に対するシオニストの主張:象徴主義に命と安全を天秤にかける価値はない」

www.wsj.com

この論稿の著者はエリオラ・カッツ氏で、WSJ誌のロバート・L・バートレイ元フェローです。生まれはアメリカですが、イスラエルで学問をおさめた人物です。

では、カッツ氏の論稿を読んでみましょう。

エルサレムイスラエルの首都であることは認めるが、人々を危険にさらしてまで首都承認や大使館移転を行うべきではない、とカッツ氏は主張します。

As a Zionist, I agree Jerusalem is Israel’s eternal capital, as well as its contemporary one. But precisely as a Zionist, I oppose such action now. However appealing it is, it would unnecessarily put lives at risk.

シオニストとして、エルサレムイスラエルの永遠の首都であり、現代の首都であることには賛同する。しかし、シオニストとして厳密に言えば、こうした行為には賛同しかねる。(大使館移転、首都承認は)魅力的な行為ではであるが、生命を不必要に危険に晒している。

その根拠として、まずカッツ氏は、アメリカによるエルサレムの首都承認に対し、ハマスが「エルサレムインティファーダ」を「加速させる」と誓っていることを挙げます。ガザ地区に拠点を置くテロ組織(ハマスのこと)はパレスチナ人に対し「反乱を起こしこの陰謀が成り立たないようにせよ」と呼び掛けています。

この「エルサレムインティファーダ」とは2015年にウェスト・バンクとエルサレムで頻発したパレスチナ人によるテロ攻撃を指します。きっかけとなったのは、ムスリムにとっての聖地「ハラム・ア=シャリフ」、または「神殿の丘」(こちらはユダヤ人にとっての名称)をイスラエルが侵しているとの主張でした。

トランプ大統領による大使館移転発表の以前から、イスラエル人が既に殺害されている、とカッツ氏は述べています。

In early January Fadi al-Qunbar, a Palestinian from East Jerusalem, killed four Israeli soldiers in a truck-ramming attack. He was allegedly motivated by hearing a sermon excoriating President-elect Trump’s campaign promise to move the embassy.

1月初旬には、東エルサレム出身のパレスチナ人、ファディ・アル=クンバールがトラックを使った攻撃で4人のイスラエル兵を殺害した。彼の動機は、大統領に選出されたトランプ氏の大使館移設の公約であったとされる。

カッツ氏は、「中東では、政治は常にメタフィジカル(非物質的、形而上学の)なものに密接に関連している」とし、「聖なる都市に大使館を移転するのは神聖なる火を弄ぶ行為であり」、「もっとも危険な行為である」とします。特に、スンニ派アラブ諸国イスラエルが協力してイランに対抗しなくてはいけない時期に、宗教的な不安定要素を増大させるべきではないパレスチナ人過激派にイスラエルを攻撃する口実を与える必要はあるか?とカッツ氏は問います。

Zionism was built on realizing the age-old dream of Jewish self-determination, always married to a pragmatic spirit. Zionists aim to become agents, rather than victims, of history by showing the world that Jewish lives matter. That requires realism—shrewd calculation of which battles are worth fighting.

シオニズムユダヤ人の長年の夢である民族自決の上に立っており、プラグマティックな精神とは不可分なものである。シオニストは世界にユダヤ人の生命が重要であると示すことで、歴史の被害者ではなく、歴史の主体者となることを狙う。そのためには現実主義、つまりどの戦いに価値があるのかをずる賢く計算することが必要となる。

つまりカッツ氏は、徹底した現実主義的思考を通じ、本当にユダヤ人にとって必要な戦いは何か?を考えるべきだと述べています。

The father of modern Zionism, Theodor Herzl, expressed the idea as follows: “Jews had, as a matter of fact, long been among the most ingenious entrepreneurs. It was only our own future that we had never built upon a business basis.” Idealism mattered, but so did a hardheaded analysis of rewards and risks.

現代シオニズムの父、テオドール・ヘルツルは、「ユダヤ人は独創的な企業家の中に多く存在した。ビジネスの上に築かれなかったのは我々の未来だけだ。」と言った。理想主義も大切だが、報酬とリスクの冷静で手堅い分析も大切だった。

こうした考えに基づけば、政治的な象徴主義よりも人命こそが重要である、とカッツ氏は述べ、こうした宣言(首都承認、大使館移転)は平和合意を難しくするのではないか?人混みに車ごと突っ込む様な殉教者を止められるほどイスラエルの当局は力をもっていない、とカッツ氏は説明します。

カッツ氏は、元イスラエル首相のエフード・バラックが、すべてのイスラエル人は「安全第一」と認識している、とした旨を引用し、改めてカッツ氏は、トランプ大統領の公約は危険さを増すだけだ、としています。

カッツ氏の論稿は、以下の通りで終了します。

Is the symbolism worth the risk to life and stability? I think Herzl would say no.

象徴主義は生命と安全を危険にさらすほどのものだろうか?ヘルツルは「ノー」と言うだろう。

要は大使館移転と首都承認という「象徴主義」的な行為はイスラエルに対する危険や脅威を不必要にあおるだけである、というのがカッツ氏の主張です。 

まぁ、すべてのイスラエル人(シオニスト)が首都承認を喜んでいるわけではないようです。

続きましては。

②ザ・ヒル

「なぜトランプのエルサレム首都承認は正しいのか」

thehill.com

論稿の著者、アラン・M・ダーショウィッツはハーバード・ロースクールの教授です。

少し長めの論稿になりますが、お付き合いください。

ダーショウィッツ教授はまず、国連決議ならびにオバマ元大統領を批判します。

President Trump’s decision to recognize Jerusalem as Israel’s capital is a perfect response to President Obama’s benighted decision to change American policy by engineering the United Nations Security Council resolution declaring Judaism’s holiest places in Jerusalem to be occupied territory and a “flagrant violation under international law.”

トランプ大統領によるエルサレムイスラエル首都承認は、エルサレムユダヤ教の聖地を「占領地」と指定し「(占領行為は)国際法の言語道断たる違反」という国連安全保障理事会決議案の細工を行った、オバマ大統領によるアメリカ外交政策の暗愚な失敗に対する完璧な対応である。

教授は「(エルサレムの)ステータス・クオを変えたのはオバマ大統領である。パレスチナ人に将来の交渉に対する莫大な影響力を持たせ、彼らから平和の合意達成能力を奪い、平和合意の達成を難しくした」とオバマ大統領を批判。

ユダヤ教の聖地が不当に占領されていると宣言する一方的な国連決議に対し否決権を行使するのが、アメリカの長年の外交方針であった。オバマ大統領によるこの方針の変更は米国の国益や平和のためではなく、ネタニャフ首相に対する「個人的な復讐」であり、退陣する予定の大統領による噴飯ものの行為であった。またこれは、大統領候補であったトランプ氏の「手を縛る」行為でもあった、と教授は痛烈にオバマ大統領を批判。アメリカは国連による一方的な決議を認めない、という姿勢を打ち出したトランプ大統領の行いは正しいものである、とトランプ大統領を称賛します。

So if there is any change to the status quo, let the blame lie where it should be: at the hands of President Obama for his cowardly decision to wait until he was a lame-duck president to get even with Prime Minister Netanyahu. President Trump deserves praise for restoring balance in negotiations with Israel and the Palestinians. It was President Obama who made peace more difficult. It was President Trump who made it more feasible again.

現状に対する変更があるとすれば、批判は然るべきところに向けられるべきだ。ネタニャフ首相と対等になれるレーム・ダック状態になるまで待とうというオバマ大統領の臆病さに対してだ。トランプ大統領イスラエルパレスチナの交渉に均衡を取り戻した点で称賛されるべきだ。平和の達成を難しくしたのはオバマ大統領だ。これらを実現可能にしたのはトランプ大統領だ。

とんでもなく一方的な国選安保理決議は、「1967年6月4日に制定された(エルサレムに関するものを含む)境界線に対する変更」は「いかなる法的正当性も持たず国際法に対する言語道断の違反である」とした。つまりこれは、祈祷のための広場を(ユダヤ教の聖地である)「嘆きの壁」に建設するというイスラエルの決定も「国際法に対する言語道断の違反」とするものだ。オバマ政権が後にアメとムチ政策の過程で(?)主張した様に、ウェスト・バンクへの入植だけにこの決議案は対応されなかった。イスラエルのすべての重要な場所に対して、この決議案は対応されたのだ、と教授は解説します。

そして、ユダヤ人が1967年以前にも不当な扱いを受けていた、と教授は続けます。

Before June 4, 1967, Jews were forbidden from praying at the Western Wall, Judaism’s holiest site. They were forbidden to attend classes at the Hebrew University at Mt. Scopus, which had been opened in 1925 and was supported by Albert Einstein. Jews could not seek medical care at the Hadassah Hospital on Mt. Scopus, which had treated Jews and Arabs alike since 1918. Jews could not live in the Jewish Quarter of Jerusalem, where their forbearers had built homes and synagogues for thousands of years.

1967年6月4日以前、ユダヤ人はユダヤ教の聖地である嘆きの壁での祈祷を禁じられていた。1925年にアルバート・アインシュタインの支援のもと開設された、スコーパス山のヘブライ大学の授業に出席することも禁じられていた。1918年以来、ユダヤ人とアラブ人を同様に扱っていた、スコーパス山のハダッサー病院での医療措置も受けられなかった。ユダヤ人は先祖が何千年もの間に建てた家やシナゴーグがあるエルサレムユダヤ人地区にすら住めなかった。

こうしたユダヤ人に対する禁止的措置(Judenrein)は、これらのユダヤ人地域を1948年のイスラエル独立戦争の間に軍事的手段で獲得したヨルダンが実施した措置であり、アラブ諸国の為に国連が確保したウェスト・バンクをヨルダンは不法に占領した。ヨルダン政府はこれらユダヤ人の歴史的地域を占領した際、シナゴーグや学校、墓地を含むすべてのユダヤ教の遺物を破壊し、墓石を小便器として使用した。1948年から1967年の間、国連はヨルダンによる占領と文化の破壊行為を非難する決議を出さなかった、と教授は批判します。

イスラエルがこれらの地を取り返した時、アメリカはイスラエルの「正当な」主張を認めなかった、と教授は続けます。

When Israel retook these areas in a defensive war that Jordan started by shelling civilian homes in West Jerusalem, and opened them up as places where Jews could pray, study, receive medical treatment and live, the United States took the official position that it would not recognize Israel’s legitimate claims to Jewish Jerusalem.

ヨルダンによる西エルサレムの民間人居住地域に対する砲撃から始まった防衛戦争の結果、イスラエルはこれらの地域を取り返し、ユダヤ人が祈り、学び、医療措置を受け生活ができる様にしたとき、アメリカはエルサレムに関するイスラエルの正当な主張を認めないという公式な立場をとった。

アメリカは、新たに解放された地域を含むエルサレムの状況については、最終的な交渉に委ねられるべきであり、現状を維持するとした。これこそが、アメリカが西エルサレムを含むエルサレムのいかなる地域も承認しなかった公式な事由であり、エルサレムで生まれたアメリカ市民のパスポートの出生地に「エルサレムイスラエル」の文字を記入させなかった理由である、と教授は解説します。

But even that ahistoric status quo was changed with President Obama’s unjustified decision not to veto the Security Council Resolution from last December. The United Nations all of the sudden determined that, subject to any further negotiations and agreements, the Jewish areas of Jerusalem recaptured from Jordan in 1967 are not part of Israel. Instead, they were territories being illegally occupied by Israel, and any building in these areas — including places for prayer at the Western Wall, access roads to Mt. Scopus, and synagogues in the historic Jewish Quarter — “constitutes a flagrant violation under international law.” If that indeed is the new status quo, then what incentives do the Palestinians have to enter negotiations? And if they were to do so, they could use these Jewish areas to extort unreasonable concessions from Israel, for which these now “illegally occupied” areas are sacred and non-negotiable.

しかしこの歴史に無関心な現状も、昨年12月から始まった、オバマ大統領による国連安保理決議に否定権を行使しないという不当な決定の結果、変わってしまった。国連は突如、1967年にヨルダンからイスラエルが奪還した地域はイスラエル領としては認めない、と決定。代わりに、これらの地域はイスラエルが不当に占領している地域であり、嘆きの壁の祈祷エリアやスコープス山への道路、そしてユダヤ人居住区のシナゴーグを含むいかなる建造物は「言語道断の国際法違反」であるとした。これが新しい現状であるとすれば、パレスチナ人はいかなる動機をもって交渉に臨むだろうか?そして彼らが臨むとすれば、彼らはイスラエルから理不尽な譲歩を強請ることができ、これらの「不当に占拠された」地域は今や神聖で交渉不可能なものである。

オバマ大統領の国連安保理決議に対する否決権非行使は後任者の「手を縛る」企みであり、前提条件のないイスラエルによる交渉の提案を難しくするものである。一度合意に至ると否決権を可逆的に行使することは出来ず、ロシアと中国を含む国連安保理常任理事国による反対決議がない限り、決議を覆すことはできない。そしてロシアと中国が協力する見込みはない、と教授は再びオバマ大統領の「企み」を批判します。

トランプ大統領によるエルサレムの首都承認は均衡を取り戻し、ユダヤ人に禁じられた土地であるエルサレムに対する禁止措置的な決議をアメリカが受け入れないと示し、3つの宗教の聖地であるエルサレムイスラエルの首都であると承認しないというアメリカのスタンスは現状を変更するべきでない、という概念に基づいていると教授は解説。しかしながら国連決議はまさに現状変更を行っている、としています。国連イスラエルユダヤ教聖地でのプレゼンスは「言語道断の国際法違反」であり「国連は認めない」、としていると教授は批判します。

Since virtually everyone in the international community acknowledges that any reasonable peace would recognize Israel’s legitimate claims to these and other areas in Jerusalem, there is no reason for allowing the U.N. resolution to make criminals out of every Jew or Israeli who sets foot on these historically Jewish areas. (Ironically, President Obama prayed at what he regarded as the illegally occupied Western Wall.)

いかなる合理的な平和もエルサレムとその他の地域のイスラエルの合法的な主張を認めると国際コミュニティのほぼ全員が認識しているが故に、歴史的なユダヤ人地域に足を踏み入れるすべてのユダヤ人やイスラエル人を犯罪者と見做す国連決議を赦す理由は存在しない。(皮肉にも、オバマ大統領は不正に占領されているはずの嘆きの壁で祈りをささげている。)

オバマ大統領の推薦を受け、エルサレムで領有が争われている地域(ここにユダヤ人の起源があることは議論をまたない)でのイスラエル人のプレゼンスや立ち入りを国際犯罪と国連が見做したのち、 トランプ大統領が自身の手を「解き」、前任者による被害を修復したことは正しいのである、と教授は言います。アメリカがエルサレムを承認すべきでない理由として、アラブ人テロリストによる暴力を引き起こすからである、と非難する声もある、と教授は説明します。

最後の段落は以下の通りです。

No American decision should ever be influenced by the threat of violence. Terrorists should not have a veto over American policy. If the United States were to give in to threat of violence, it would only incentivize others to threaten violence in response to any peace plan. So let’s praise President Trump for doing the right thing by undoing the wrong thing President Obama did at the end of his presidency.

いかなるアメリカの政策決定も暴力の脅しに影響されるべきではない。テロリストがアメリカ外交政策に対し否決権を持つべきではない。もしアメリカが暴力の脅しに屈するとなれば、いかなる平和プランに対しても他者が暴力に訴える様になってしまう。だからこそ、オバマ大統領が任期終盤におかした愚行を打ち破る、正しい行いをしているトランプ大統領を称賛しよう。

非常に長い論稿ですが、ざっくり言ってしまえば、「イスラエルは不当な扱いを受けてきた挙句、アメリカは(特にオバマ大統領は) きちんとイスラエルを支援しなかった。トランプ大統領はそれらの愚策を修正している大統領である」ということになります。

イスラエルパレスチナ人に対し行った弾圧行為などには一切触れておらず、100%イスラエルの肩をもつ論稿です。この教授、イスラエルロビーからカネでももらっているのでしょうか。

いずれにせよ、アメリカでは中道左派系とされる『ザ・ヒル』にここまで親イスラエルの記事が載るとは驚きです。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

トランプ政権の決定に対し否定的な論稿と肯定的なものを見てまいりました。

両者の言い分にはいずれも納得できる部分があります。

今回の決定でハマスを始めとする過激派がイスラエルやアメリカに対し何らかの報復行為や、インティファーダに走る恐れは十分にあります。

イスラエル、特にユダヤ人が先祖の地を他民族に奪われ、流浪の民であったことも事実です。

どちらの言い分を良しとするかは各人の判断によるところですが、筆者としてはやはりエルサレムの首都承認や大使館移転を支持します。

これまでは事実上、エルサレムの首都承認を棚上げとしてきており、しかしながらそれにすら反発するパレスチナ過激派組織によるテロ行為が行われてきました。

イスラエル軍による強権的な弾圧行為も許されるべきではありませんが、あくまでもパレスチナ側は国内過激派をいましめ、平和的交渉を目指すべきだったのではないでしょうか。

イスラエルは中東では数少ない民主主義国家であり、中東情勢における重要なアクターであります。

イスラエルの国家としての地位を確立させることで、多少の反発はあれど、中東情勢を安定化させることが可能なのではないでしょうか。