A Journey for “Proper Works”

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民主主義は死んでいない

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「民主主義は死んだ」ーーー。そんなフレーズを耳にしたことのある人は多いでしょう。

我が国においては、自民党特定秘密保護法や平和安全法制を成立させた折など、一部メディアやリベラル勢力の主張と対立する立法・行政が行われたときにこのフレーズは多用されてきました。

www.jiji.com

例えば特定秘密保護法だね。国会の議論も全然足りなかったし、国民も内容は分からないまま。国民の権利に関する重要法案で強行採決がまかり通り、それでも大きな問題になっていないのは、議会制民主主義が形骸化して死んでしまったということだ。

他にも、アメリカでドナルド・トランプ氏が大統領に選出された時も、「ノット・マイ・プレジデント」というフレーズを標ぼうする人々による抗議活動がアメリカで発生しました。

www.nbcnews.com

NHKをはじめ日本のメディアは「ノット・マイ・プレジデント」運動がアメリカのメインストリームであるかの様に報じていたと筆者は記憶していますが、こうした運動が起きたのはニューヨークやサンフランシスコなどのブルー・ステーツ(民主党が伝統的に強い地域)が中心であり、けっしてアメリカで全国的に起きていた現象ではありません。

それもこれも日本のメディアがニューヨークやワシントンなど主要都市のきれいなオフィス街にしか特派員を置かず、置いたとしても彼ら特派員はニューヨーク・タイムズやCNNなどアメリカの一部メディアの内容を横流ししているだけだからこそ起こる問題なのですが(そしてこの構図が1990年代から変わっていないのも大きな問題です)。

さて、世界的な流れとして、民主主義は死んだのでしょうか?

ウォール・ストリート・ジャーナルにこんなコメンタリー記事が寄せられました。

◇民主主義は死からほど遠い

www.wsj.com

寄稿者のブルース・ジョーンズとマイケル・オハンロンはいずれもブルッキングス外交政策研究所の研究員です。

With recent setbacks in the Philippines, Turkey, Venezuela and elsewhere, it is common to hear laments about the decline of democracy world-wide. Turbulent times in Britain and the U.S. add to the concern, as does the sweeping failure of the so-called Arab Spring since 2011. After major waves of progress in the wake of World War II and the Cold War, is freedom starting to sputter?

フィリピン、トルコ、ベネズエラなどでの諸事象を聞くにつれ、世界的に民主主義の減退を嘆く声を聞くことが多くなった。

イギリスやアメリカに加え、いわゆる2011年のアラブの春の失敗などである。

第二次世界大戦と冷戦をきっかけに起こった(民主主義の)進歩の波の後、自由は終わり始めているのだろうか?

しかしちょっと冷静に考えてみよう、と両氏は問います。

It is true that the “third wave” of democratization—the proliferation of democratic states in the late 20th century—has largely ended. But it has not been reversed by any stretch of the imagination.

20世紀後半に始まった民主主義国家の拡大、つまり民主化の「第三の波」は確かに止まった。しかしその「波」はどんなに想像力を増大させても、ひっくり返されてはいない。

2000年までに、世界の3分の2にあたる国家(およそ120カ国)において選挙制民主主義が成立している、と両氏は指摘します。

21世紀に入ってから逆性の動きはあったものの、その程度は大きなものではなく、アメリカのNGO団体フリーダム・ハウスによれば、「自由ではない」と判定された国家の数は2006年が23%、2016年が25%であるそうです。

しかし、インドやインドネシア、ナイジェリア、ブラジルなどは現状民主主義国家として成立しており、「自由でない」国家に住む人々は過去10年で37%から36%に減少しており、「自由な」国家に住む人々は44%から45%に増加している、と両氏は指摘します。

民主主義はほかの政治制度に勝るものであり、民主主義国家同士が戦争に至ることは無く、(少なくとも国家間戦争に限定すれば)第二次世界大戦以降、世界は人類史上最も暴力を経験していません。

ブラジルでは大統領の弾劾問題がありつつも、憲法にのっとった形が保たれ、インドでも強権的なリーダーがバランス・オブ・パワーのもとしっかりと監視を受けており、何より英国における「ブレグジット」も民主主義的選択の結果である、と両氏は解説します。

そして、以下の様に論稿を締めくくります。

We do need to learn one lesson from history’s recent sobering course: Democracy is fragile and can never be taken for granted. But declarations about democracy’s demise, or even its significant decline, go too far.

歴史から我々は学ぶ必要がある:民主主義はもろく、当然のものと思ってはいけない。

しかし民主主義の崩壊や、その著しい減退を宣言するのは、やりすぎだ。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

韓国では、朴槿恵大統領が親友の女性に対し政治上の機密を漏洩したとの疑惑で辞任しました。朴槿恵大統領の辞任を求める国民がソウルに結集(いわゆる「ローソク運動」)しましたが、その数は170万人

www.huffingtonpost.jp

しかし、2012年の韓国大統領選挙の際、朴槿恵候補は約1577万票を獲得し投票しました(本当は韓国政府の統計を引用したかったのですが、韓国語は読めないので、数値はWikipediaより)。

2012年大韓民国大統領選挙 - Wikipedia

朴槿恵大統領を選んだ有権者のうち、わずか10%に満たない人々の「怒り」「市民の声」とやらで朴槿恵大統領は辞任させられたわけです。

ひるがえって我が国でも、特定秘密保護法案や平和安全法制の立法時や、集団的自衛権閣議決定時などにおいて、国会の前に集結し、与党・自民党に反対するデモ活動がクローズアップされました。

www.huffingtonpost.jp

参加者は主催者によると、霞が関などの周辺地域を含めてのべ約35万人、警察発表では国会前だけで約3万3000人が参加した。

ちょっと時期はズレますが、今年の10月に行われた選挙での自民党の得票率を見てましょう。

www.asahi.com

朝日新聞が23日午後9時40分現在で集計した結果、自民党は289選挙区で2672万票を獲得

上述の平和安全法制反対デモの参加人数が、主催者発表で35万人。あえてこちらで計算したとしても、この数は自民党に投票した有権者数のわずか1.3%でしかありません。

最終的に平和安全法制は立法に至ったので良かったですが、もし国会前デモを理由に法案が審議から弾かれたり、廃案されるようなことがあれば、それこそ民主主義の死です。

有権者数に遥かに及ばない「市民の声」とやらで政治が動かされることこそ、まさに独裁政治そのものではないでしょうか。

憲法によって制定された選挙制民主主義に基づき、有権者によって選出された国会議員が国会における正当なプロセスを経て立法しているわけです。

安倍首相やトランプ大統領など、自分の政治的思想信条にそぐわない人物が行政の長におさまっているからと、安易に「民主主義は死んだ」と叫ぶ行為こそが、民主主義を死に至らせる病なのです。